生活保護医療券の使い方と注意点!受給者が知っておくべき医療サポート

生活保護を受給していると、収入の最低不足分が毎月支給され、必要に応じて医療費の支給を受けることも可能です。多くの受給者が、医療券を使い病院を受診しています。

とはいえ、医療券についてわからないことも多く、発行する方法や使い方など心配に思うこともあるでしょう。生活保護の医療券とは何か、詳しく説明していきます。

生活保護の医療券とは?

生活保護の医療券とは、受給者が医療機関の窓口に提示し利用するものです。
医療機関に提出すると、保険診療の医療費が無料になります。

生活保護受給者は医療扶助の対象

生活保護は8つの扶助によって成り立っています。そのなかで、医療扶助は困窮のため最低限度の生活を維持することのできない人に対して、医療の給付を行います。

ただし、給付により他の収入がある場合は、その給付が優先されることになります。
また、医療扶助は、保険診療のみが対象となるため、保険外診療は対象外です。

国民健康保険の資格がなくなる

生活保護を受給すると、保険料の支払いが免除になります。保険料を支払わなければ、国民健康保険の資格を喪失します。国民健康保険が適用されないと、医療費が全額負担となります。最低限の生活から医療費を捻出するのは、現実的ではないでしょう。

国民健康保険の資格がなくなる代わりに、医療券が発券され無料で医療機関を受診できるようになるのです。

自治体で指定された病院のみ使用できる

医療券は、自治体で指定された病院のみ使用できます。生活保護を受給する以前に受診していた病院があっても、指定医療機関ではない場合、通院する病院を変更しなくてはいけなくなります。

診療情報は病院が変わっても共有されますので、引き続き治療が受けられます。
事前にケースワーカーに相談しておき、受診できる病院を探すようにしましょう。急な体調不良も考えて、家から近く通いやすい医療機関を選ぶようにしてください。

オンラインで資格確認ができるようになった

2024年3月より、マイナ保険証に対応している病院のみ、オンラインで資格確認ができるようになりました。事前に自治体にて、マイナンバーカードを発行する必要があります。

マイナンバーカードを使った確認方法では、ケースワーカーに受診したい旨を伝えたあと、医療券を福祉事務所に取りに行く手間もかかりません。マイナンバーカードを医療機関にて提示するだけで、無料で保険診療が受けられます。

マイナンバーカードは、あくまでも任意となります。
そのため、マイナンバーカードを発行していない人は、従来の医療券が発券できます。

生活保護で医療券を発行してもらう手続き

生活保護の医療券を発行してもらうための手続きを説明します。

ケースワーカーに相談して必要性を判断してもらう

医療券を発行するためには、ケースワーカーの判断が必要です。管轄の福祉事務所にて発行してもらえるため、まずはケースワーカーに相談します。医療券は有効期限が決められているため、医療機関を受診する前に発行するようにしましょう。

有効期限内であれば、新しい医療券を発見してもらう必要がなくなります。ただし、有効期限が月を跨ぐ場合は、再発行が必要になる可能性も出てきます。また、医療券はあくまでも、指定の医療機関でのみ使用できます。

新しく別の病院に行く場合は、別の医療券を発行してもらう必要があります。診療科が変わる場合も、医療券を発券してもらう必要があるため事前に確認しましょう。

福祉事務所にて申請する

ケースワーカーに相談し、医療券が必要だと判断された場合は福祉事務所に、受給者本人が取りに行くことになります。

もしくは、福祉事務所から受診予定の医療機関に、直接FAXで送ってもらえる場合もあります。管轄の福祉事務所によっても対応が変わるため、どちらの対応になるかどうかを確認しておきましょう。

発行した医療券をもって指定医療機関を受診する

発行した医療券を持って、指定医療機関を受診するようにしてください。

ただし、医療券の注意事項として1つの科で1つの病院でのみ発行できるということです。例えば、内科を受診したいと医療券を発行したときは、他の胃腸科や心療内科などの別の診療科は受診できません。

通っている病院が合わず別の病院に通いたい場合も、ケースワーカーに相談し、新しい医療券を発行してもらう必要が出てきます。

また、指定医療機関がどこにあるのかわからない人もいるでしょう。
医療機関を探す方法は以下の2種類があります。

ケースワーカーに教えてもらう

一番簡単にできる方法は、担当のケースワーカーに相談するやり方です。医療券を発行してもらうときに、受診目的に適した診療科のある病院があるかどうか確認してみてください。

ケースワーカーは受診者にとって、困ったことがあれば気軽に相談しやすい重要な存在です。受診者のことも理解しているので、病院を探したいときにもおすすめです。

自治体のHPで確認する

指定医療機関は、各自治体のHPを使って確認することもできます。お住まいの地域に医療機関が多い人は、どこに受診できるのか調べるようにしてください。

大きな病院に限らず、クリニックでも指定医療機関として受診できる場所もあります。

医療券を使わずに医療機関の受診も可能

生活保護の受給者は、医療券を持って指定医療機関を受診するのが基本です。ただし、緊急性のある体調不良など医療券を発行する手順が難しい場合もあるかもしれません。

医療券を使わずに、医療危険を受診できるのか、詳しく見ていきましょう。

緊急性があるときは可能だが自己負担になることも

受給中に救急車で運ばれる人もいれば、福祉事務所が営業していない夜間に、病院を受診することも出てくるかもしれません。

緊急性がある際は、医療機関の受診を我慢するよりも病院にて適切な治療を受けるようにしてください。

ただし、医療券がなく受診する場合は、自己負担になる可能性も出てきます。
具体的には、以下のようなケースが考えられます。

・一度全てを立て替えて、後日医療券を提示し返金してもらう
・医療費を全て自己負担で受診する

いずれかの方法となります。

受診した医療機関が、生活保護受給者を受け入れる指定病院だった場合は、後日医療券を持って行くと、返金対応をしてくれる場合もあります。

受診する病院で生活保護を受けていることを必ず病院に伝えるようにしてください。また、受信後、落ち着いてからケースワーカーに連絡を入れます。

もし、余裕があれば生活保護を受給していることがわかる「受給者証」をもっていくのをおすすめします。

ただし、生活保護受給者の受け入れを行っていない医療機関を受診した場合は、後日医療券を持参しても、返金されません。全て自己負担となってしまうことも考えられるため、事前に生活保護に対応しているかどうか、救急病院の窓口や電話にて確認しましょう。

生活保護の医療券を使う流れ

生活保護の受給者が医療券を使う際の流れについて説明します。

事前に電話で確認する

初診の場合、病院を受診する前に、電話で確認するようにしましょう。混雑を回避するために、完全予約制の病院も増えています。

特にクリニックの場合は窓口に行ったにもかかわらず、混雑していて受診を断られてしまう可能性もあります。電話で「予約は必要かどうか」を聞いたうえで、診療時間内に病院を受診するようにしましょう。

病院の窓口で医療券を出し手続きをする

病院の窓口では、医療券もしくはマイナンバーカードを提示して受付を行います。定期的に受診する場合でも、毎月初めての受診の場合は医療券の確認作業があります。

窓口で自分の名前を伝え、医療券を一緒に出して順番を待ちましょう。医療機関では生活保護の受給者かどうかは、他の患者さんにはわからないように対応してくれます。

処方箋をもって薬局に行く

病院で診察後に処方箋をもらったら、薬局に処方箋を持っていきます。どこの薬局でも対応できるわけではなく、生活保護法の指定を受けた薬局のみが対象です。

指定医療機関の近くにある薬局だと対応してくれる場合が多いと思います。

病院同様に医療券を提出して薬を処方してもらいます。医療券を忘れると全額自己負担となる可能性もあるため、必ず提示するようにしてください。

病院によって院内処方を行っている場合は、薬局に行くことなく薬を処方してもらえます。
受給者の場合、ジェネリック医薬品の処方が原則となります。

薬局もかかりつけ薬剤師として場所を決めておくようにしましょう。使用している薬をまとめて管理できますし、複数の医療機関より処方されていたとしても重複することもありません。注意するべき飲み合わせに気付けるなど、安全・安心に使用することに繋がります。

医療券を使用する時の注意点

医療券を使用するときに覚えておきたい注意点を紹介します。

・有効期限がある
・1つの科で1つの病院のみ発行される
・保険診療のみが対象
・紛失した場合は再発行
・家族の医療券はつかえない
・受診は平日の昼間が基本

それぞれ詳しく見ていきましょう。

有効期限がある

生活保護の医療券の有効期限は「月内」が基本です。そのため、月をまたぐ場合は、再度申請を行う必要が出てきます。受診する前に発行しておかないと、有効期限が切れてしまい医療券が使えなくなってしまう可能性もあります。

1つの科で1つの病院のみ発行される

医療券は1つの科で1つの病院のみとなります。病気によっては、複数の病院や診療科を受診している人もいるかもしれません。

診療を受ける病院が増えれば、その分医療券の数も増えていくため、紛失しないように管理しておきましょう。

保険診療のみが対象

生活保護の医療券は保険診療のみが対象です。自費診療である歯列矯正や脱毛、美容整形、レーシック、コンタクトレンズは対象外となり、全て自己負担で治療を行うようになります。ただし、歯列矯正のみ先天性の要因が考えられる場合は、保険適用になることもある可能性もあります。医師によっても判断が変わってくるため一概にはいえません。

紛失した場合は再発行

医療券を忘れてしまった場合は、医療扶助が使えなくなってしまうため一度家に帰って取りに戻るようにしてください。医療券を紛失してしまった場合、再発行の手続きが必要です。

福祉事務所やケースワーカーに連絡をして再発行の手続きをします。その日は病院を受診できなくなってしまうため、管理をしっかりとしておきましょう。

家族の医療券はつかえない

医療券は、受給者個人に発行されているものです。家族の医療券を持ってきても、医療扶助での受診はできません。医療機関に行く前に、正しい医療券を持っているかどうか確認してください。紛失したからといって家族の医療券を持って行っても受診はできません。

受診は平日の昼間が基本

受給者の場合、医療機関を受診するのは平日の昼間が基本です。夕方以降は、福祉事務所が営業時間外になってしまうため、医療機関より確認の電話があったとしても対応できません。

また、夕方以降の時間は医療機関が混雑している可能性も高く、待ち時間も発生します。平日の昼間は比較的すいている時間帯になるためスムーズに受診できます。

医療券なし受診は受給できなくなる可能性も

受給者にとって医療券は欠かせないものですが、医療券なしで病院を受診できないわけではありません。

ただし、全額自己負担での受診になってしまうため、自己負担で払える=生活に困っていないと判断されてしまう可能性も出てきます。受給者の生活を維持するための医療扶助だからこそ、医療券なしで受診するのはおすすめできません。

かかりつけ医を決めておくと安心

病気かなと思ったときに、気軽に相談できるかかりつけ医を決めておくと安心です。自宅周辺の指定医療機関で、医師との相性も含め判断しましょう。かかりつけ医がいると過去の病気や健康状態を把握しているからこそ、適切な健康管理のアドバイスを受けられます。

生活保護受給者は、医療機関を受診することが多いと言われています。厚生労働省が発表している年間の生活保護費のなかで、半分は医療扶助が占めています。

受給者がケースワーカーに相談したうえで必要性を考慮して発行されているため、無駄な医療費がかかっているわけではありません。それだけ、生活保護受給者は、病気やケガによって収入が減少してしまう理由があるということでもあるのです。

まとめ

生活保護の医療券は、事前にケースワーカーに相談して福祉事務所にて発行してもらいます。指定医療機関を医療扶助で受診するためには、事前の発行が必要になるため、受診する前に医療券の手続きを進めておきましょう。

また、急な不調のときに相談できるかかりつけ医を決めておくと安心です。医療機関を受診する際は、医療券を忘れずに持っていくようにしてください。

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