生活保護は毎月いくらもらえる?収入と扶助内容の詳細を解説

生活保護は、単身でも家族と生活していても生活に困窮していれば受給できます。

ただし、お住まいの地域によっても区分があり、受給できる金額にも差があります。生活保護を受給し、いくらもらえるのか気になっている人もいるでしょう。生活保護の扶助の内容や、受給するための条件について説明します。生活保護を受給するといくらもらえるのか、詳しくシミュレーションしていきますので、参考にしてみてください。

生活保護の最低生活費とは

生活保護は、健康で文化的な生活を営むために定められた最低生活費を確保するためのものです。生活保護は「生活扶助」+「住宅扶助」を基準として計算します。この他に該当する扶助があるときは加算され、収入がある場合は差し引いた金額が支給される仕組みです。

具体的には以下の計算方法を用いて最低生活費を計算しています。

生活扶助+特例加算+経過的な加算+住宅扶助+その他条件を満たす扶助=最低生活費

お住まいの地域や世帯人数などの家族構成によって金額が異なります。

生活扶助と住宅扶助についてそれぞれ詳しく見ていきましょう。

生活扶助は地域によっても変わる

生活扶助は、食費や雑費などの生活費全般に使用できる扶助です。

あくまでも生活に関わる費用として使えるように、使用目的が制限されています。また、生活扶助は細かく分類されているので少しわかりにくいのですが、計算したときに金額が高い方が採用される仕組みです。

また、生活扶助は基準額が二種類に分かれています。

「第一類」=食事や被服費用で年齢によって分類される

「第二類」=水道や電気代などの光熱費で世帯人数によって分けられる

その後、逓減率によって計算していきます。

6つの級地区に分類されており、都心部が1級地、郊外になると級地が下がります。

厚生労働省の級地区分を見ると、お住まいの地域がどこに該当するのかわかります。

賃貸の家賃に充てる住宅扶助

住宅扶助は、困窮している人の家賃や補修費などの住宅を維持するための給付を行う制度のことをいいます。住宅扶助には上限が定められているため、受給者は原則として住宅扶助の上限を超える物件には住めません。上限よりも安い家賃に住んでいたとしても、家賃分以上の金額が支給されることはありません。あくまでも家賃の支払いにのみ使えるため、余った分を生活費に充てることはできない仕組みです。

家賃補助の上限額は住んでいる地域や世帯数によっても異なります。

また、家賃の物価の動向や支払家賃を考慮して限度額が変わることもあります。

住宅扶助の注意点として、あくまでも家賃のみが対象になることです。管理費や修繕費、腸内会費のように家賃以外に支払うコストは対象外となります。あくまでも、賃料の部分だけになるため、自己負担で支払います。

その他の扶助には以下のようなものがあります。

扶助の種類 内容
教育扶助 義務教育にかかる学用品の費用、2,600円~
介護扶助 自宅・介護施設にて必要になってくる費用は全額給付
医療扶助 医療にかかる保険診療の費用を全額給付
出産扶助 出産にかかる医療費・入院費、259,000円~
生業扶助 就労に必要な技能を取得するための費用、5,200円~
葬祭扶扶助 葬儀などにかかる費用、164,800円~

介護扶助と医療扶助は、福祉事務所から直接振り込まれるため本人の口座には入りません。

現金で支給されている保護費は、自由に使用できるお金です。

生活保護の対象範囲は?

生活保護の受給は、条件を満たしているかどうかによって対象かどうかが決まります。

生活保護を受給できる条件は”最低生活費に満たない人かどうか”です。

具体的な対象範囲について見ていきましょう。

生活保護は最低生活費を下回るときに受給できる

生活保護を受給するうえで、最も重視されるのが最低生活費を下回っているかどうかです。

世帯全体の収入が最低生活費以下の場合、健康的な生活を営むことが困難であると判断されます。お住まいの自治体によっても変わってきますが、居住地域や世帯年収などをもとに、生活保護を受給するための条件を満たしているかどうかです。

世帯のなかに、介護が必要な人や病気の人、障害がある人がいれば生活にかかるお金も多くなり、最低生活費の金額も高くなります。そのためには、まずはお住まいの地域の条件に該当するかどうかを確認しておきましょう。

仕事をしていても世帯収入が基準を下回る場合は対象になる

生活保護は仕事をしていると対象外だと思われがちですが、世帯年収が基準を下回る場合は生活保護の対象となります。

最低生活費よりも収入が少ない=生活を営むのが困難だと判断されるため、生活保護の受給対象となります。足りていない分のみの生活費となりますが、生活が困窮している人は受給できるかどうかを相談してみてもいいでしょう。

例えば、最低生活費が15万円だとします。毎月10万円の収入がある場合、不足している5万円分を生活保護として受け取ることが可能です。

国や自治体からお金を借りられない人も対象

生活するためのお金が足りないものの、国や自治体からお金を借りられない人は生活費の対象となります。生活費が足りないと相談すると、公的融資制度の利用を進められることも少なくありません。

例えば、ひとり親で生活費が足りないときは「母子父子寡婦福祉資金貸付金」を提案します。手続きを行えば、月10万円程度のお金を一時的に借りることができます。返済の義務がありますが、今生活するのが厳しい人にとっても、必要な制度でしょう。

融資制度で生活の立て直しができる人もいれば、返済そのものが難しい人は生活保護の利用も検討してみてください。

年金を受給していても生活保護の申請はできる

生活保護を受給している人の52%が65歳以上だといわれています。

年金を受給している人でも、最低生活費以下の収入であれば生活保護の申請ができます。お金が足りずに生活に困窮している人は、生活保護の申請を検討してみてください。

病気やケガで働けない人は受給年齢は関係ない

病気や怪我によって働けずに収入に困っている人は生活保護の対象となります。

年齢の制限は設けていないため、受給年齢に関係なく申請できます。65歳以上の年代でなくとも10代・20代・30代でも医師の診断のもと、仕事を継続するのが難しいと判断された場合は、生活保護の対象となります。

自己判断では受給の対象外となってしまうこともあります。

病気や怪我による生活保護の申請は、病院にて診断書を出してもらうのをおすすめします。

その他対象者には加算される可能性がある9つの手当

生活保護には、支援額が増える加算項目があります。生活保護の受給額は、状況によっても最低限必要になる金額が変わってくるため、細かく調整されています。

加算手当 支給額(目安)
介護保険料加算 第1号被保険者に対して、納付するべき介護保険料に相当する金額を支給するもの
妊産婦加算 妊娠6か月まで 8,960円

6か月以降は13,530円

産後は8,320円

母子加算 児童1名あたり最大18,800円(18歳までの児童)加算される。母子とついていますが、父子家庭も対象となり、児童2名23,600円、3名以上で1名ごと2,900円が加算される仕組み
児童養育加算 児童1名につき10,190円(18歳までの児童)
障害者加算 身体障害者の等級によって17,530円〜26,310円で変わります。自身で障害の有無を申告しない限りは、加算されないので注意
介護施設入所者加算 介護施設に入所している被保険者に対して、経費を補填するために支給されている。全国一律で9,880円と決められています。
在宅患者加算 在宅で療養に専念している患者に対して、栄養補給などの経費を補填するもの。全国一律で13,020円と決められています。
放射線障害者加算 元患者:21,560円

現患者:43,120円

冬季加算 冬季間に必要となる暖房費などの補填で支給されている。地域の等級とは別にⅠ区〜Ⅵ区に分類され、支給される金額が決まります。

生活保護費のシュミレーション

具体的な生活保護費のシミュレーションを紹介します。

・単身者(目安10万円~13万円)

・夫婦2人世帯(目安15万円~)

・子育て世帯(目安30万円)

・母子家庭世帯(平均20万円)

それぞれ詳しく見ていきましょう。

単身者(目安10万円~13万円)

単身世帯で高齢者の場合、以下の計算となります。

生活扶助(第1類45,060円+第2類27,790円)+

特別加算1,000円+冬季加算1,096円+住宅扶助38,000円=112,946円

単身者のみの場合、生活扶助+住宅扶助の金額が低くなるため、目安となる生活保護受給額は11万円程度です。介護が必要な場合など、状況に応じて加算されることもあります。

夫婦2人世帯(目安15万円~)

夫婦二人で高齢者の場合、以下の計算となります。

生活扶助(第1類78,410円+第2類38,060円)+

特別加算2,000円+冬季加算1,554円+住宅扶助46,000円=116,024円

夫婦二人の生活となるため、単身者よりもやや高めに扶助額が設定されています。

こちらも、介護が必要な場合など、状況に応じて加算されます。

子育て世帯(目安30万円)

夫婦二人に、子どもが一人いる場合、以下の計算となります。

生活扶助(第1類100,710円+第2類44,730円)+

特別加算3,000円+冬季加算1,767円+児童養育加算10,190円+住宅扶助49,000円=209,397円

子どもがいる場合、児童養育加算が追加となり人数によって変わります。

母子家庭世帯(平均20万円)

ひとり親で、子どもが二人いると想定したときの計算です。

生活扶助(第1類100,370円+第2類44,730円)+

特別加算3,000円+冬季加算1,767円+

児童養育加算20,380円+母子加算23,600円+住宅扶助49,000円=247,860円

ひとり親の場合、父母に関わらず他にも教育扶助が受けられます。学級費などの限度額を含んだ金額になるため、月平均として算出したものです。

広島市のデータを参考にして作成しています。

世帯人数が増えると受給額が倍になるわけではない

単純に世帯に住んでいる場合は共有で使用できる部分も多くあるため、生活費を倍にして計算するわけではありません。

世帯人数が多い家が単身世帯よりも多くもらいすぎることがないように、厚生労働省にて定められた逓減率が設定されています。

単身(1人)…逓減率1.0倍

2人…逓減率0.8850倍

3人…逓減率0.8350倍

と下がっていく計算です。

世帯人数が多いときも損をしない設定でできています。

生活保護を受給できない理由

生活保護の申請をしたからといって、必ずしも受診できるわけではありません。

生活保護を受診できない理由として考えられるものを説明します。

・住宅ローンの支払をしている

・健康であり仕事ができると判断される

・福祉事務所の調査に協力しない

・審査に落ちても再度申請できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

住宅ローンの支払をしている

生活保護は、住宅ローンの支払いをしていると「資産がある」とみなされてしまい受給できなくなってしまう可能性があります。

ただし、住宅ローンの支払が終われば住み続けることは可能です。生活保護の基準は、財産を活用しても日常的な生活を送るのが困難になったかどうかで判断されています。

住宅ローンが残った持ち家の場合、売却して生活費に充てる必要があります。そもそも、生活保護費はローンの返済には使えないと決められています。

健康であり仕事ができると判断される

生活保護を希望しても、働いて収入が得られる可能性があると判断されると受給できなくなってしまいます。

心身ともに健康であり仕事ができると判断された場合、就職支援を受けるのが一般的な流れです。とはいえ、申請者自身が「仕事ができない」ことを主張すれば受け入れてもらえる可能性も高くなります。

ケースワーカーの判断によっても変わってきますので、健康な場合は受給できなくなる可能性もある点は覚えておきましょう。

福祉事務所の調査に協力しない

福祉事務所の調査に対して、非協力的な態度をとっていると生活保護の申請が通らなくなってしまう可能性があります。

必要書類を提出しないのはもちろん、預金通帳を隠していると申請が通りにくくなってしまいます。生活保護の申請を行うと、家庭訪問や資産調査、扶養義務者の有無などの調査が行われます。

実際にどのような生活をしているのか、どの程度困窮しているのかを判断するためにも必要です。ケースワーカーも含め、調査に協力し、わからないことや不安なことがあれば相談するようにしておきましょう。

審査に落ちても再度申請できる

生活保護の申請に通らなかったとしても、再申請は何度でもできます。

審査に落ちた原因を解決したうえで再審査を受けるようにしておきましょう。

例えば、「仕事ができる」と判断された場合、医師の診断書を提出する方法があります。見た目では働けない理由が証明しにくい人もいます。

そのため、診断書を提出することで一つの証明として生活保護を申請できます。また「親族の援助」があったとしても、疎遠な相手の場合拒否したい気持ちもあるでしょう。

親族との関係を、ケースワーカーに相談しておくと安心です。

まとめ

生活保護がいくらもらえるのか、世帯や状況によっても変わってきます。

生活扶助と住宅扶助は自治体によっても変わってくるからこそ、まずはご自身の状況でいくらの生活保護を受給できるのか、福祉事務所に相談してみてください。

 

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