血のつながった家族であっても、縁を切りたいと考える場合があります。
なるべく人間関係は保ちたいと思っていても、不条理なことで絶縁したいケースもあるでしょう。
絶縁したくても、実際には法律上では絶縁することは非常に困難であり、何かしらのつながりは残ってしまうのです。
ただし、お互いの中で絶縁状を送付して絶縁することは可能です。
では、絶縁状とは一体どのような内容を記載すればよいのでしょうか?
この記事では、絶縁状の書き方を例文を交えて紹介すると同時に、絶縁状を送る際の注意点を紹介します。
絶縁状とは?
絶縁状とは、相手との関係性を絶つことを、文書で宣言するための手紙のことを指します。
相手との関係を経つ際には、交友関係の場合に使用する絶交や親子関係において親から子に対して用いられる勘当についても、ほぼ同義語となります。
ただし、絶縁状の場合は文書で宣言するという点が異なり、交友関係において「絶交する」というケースがありますが、これは口頭ベースとなります。
絶縁状に法的な効力はある?
絶縁状には、実は法的な効力はいっさいありません。
例えば、遺言書については法律に従った内容で作成すれば、法的効力を持たせることが可能です。
一方で、絶縁状の場合は関連する法律などは存在しないため、作成したとしても法的な効力を持たせることはできません。
絶縁状を送るメリット
繰り返しとなりますが、絶縁状には法的な効力はありません。
事実上の絶縁状態にすること自体は、当人同士の判断にゆだねられます。
ただし、絶縁状を送ることによって親や兄弟などに自分の決意を知らしめることができるメリットがあります。
また、相手からの干渉や虐待などから逃げられる可能性があるのです。
絶縁状の書き方・例文
絶縁状には法的なルールはなく、書き方も自由です。
決まったフォームがないため、自由に作成できるメリットがある反面、書き方に困るのも事実です。
自分の思いのたけを自由に記載した上で、縁を切りたい相手に対して送付することになります。
一般的な感覚を持っている方であれば、絶縁状と記載された通知が届くだけで、それ以降のかかわり方を考え直すきっかけとなります。
絶縁状の記載方法としては、手書きした方が相手に与える影響は高いものですが、実際に作成するとなると時間がかかってしまいます。
また、文字が下手な方の場合はどうしてもインパクトが薄れてしまいがちです。
そこで、Wordなど文書作成ソフトを用いて、縦書き機能を使用して作成する方が簡単です
その場合でも、最後の署名は自筆すると絶縁に対する本気度が伝わるのですすめです。
盛り込む内容としては、大まかには以下の内容を取り入れてください。
- 絶縁状である旨の記載
- 絶縁状を作成した者の名前
- 絶縁状を送付する相手の名前
- 絶縁を希望する旨の記載
- 今後の接触を絶つ旨の記載
- 絶縁を希望する理由や経緯
また、相手との関係性によって記載内容を変化させる必要があります。
ここでは、親、兄弟に対して絶縁状を作成する場合の例文などを紹介します。
親の場合
親に対して絶縁する場合、「絶縁状」と右に大きく記載して、その隣に自分の名前を記載します。
そして、「右の者は〇〇年〇月〇日を以て絶縁いたしますのでご通知申し上げます」などと記載するのが一般的です。
以下に、親の場合の具体的な絶縁状の例文を示します。
令和○年○月○日を以て、絶縁いたしますのでご通知申し上げます。
深い悩みと多くの夜を経て、この手紙を書く決断をしました。私たちの関係が健全ではないと感じ、私自身の健康と安心のために関係を絶つことを選びました。あなたとの思い出や過去の経験に感謝していますが、今後の私の人生を前向きに進めるためにこの選択をしました。心からの尊重と理解を求めます。
長い間の関係を振り返りながら、今回の手紙を書いています。私たちの間には多くの未解決の問題や感情があると感じており、私自身の心の平和を求めるため、関係を絶縁することを決断しました。この選択が最善であると信じています。お互いに新しい人生のスタートを切るための一歩として、この決定を尊重していただきたいと思います。
兄弟の場合
兄弟に対しての絶縁状においても、基本的には親子間と同じ記載内容となります。
ただし、親子間よりも年齢が近い関係上、より長く絶縁の状態が継続することが見込まれます。
よって、今後の付き合い方に関して追記しておくのもよいでしょう。
例えば、「絶縁いたします」と記載した後に、「お互いに困ったことがあっても、決して助け合わない」などを宣言する方法があります。
以下に、兄弟の場合の具体的な絶縁状の例文を示します。
令和◯年◯月◯日付を以って、絶縁致しますのでご通知申し上げます。
長い時間、私たちの関係について考えてきました。私たちの間には、解決できない障壁や誤解があると感じています。私の精神的な安定のため、そしてお互いの成長のため、関係を一時的に絶つことを決意しました。これは怒りや恨みからの決断ではありません。時間と距離を持って、自分の心を整理するための選択です。私の気持ちを尊重していただけることを心から願っています。
私たちの間に生じた誤解や感情のもつれを解決するため、距離を持つことを選びました。これは決してあなたを傷つけるための選択ではありません。私自身の感情と向き合い、今後の人生の方向を見つめ直すための時間を持ちたいと考えています。いつか、お互いに明るく前向きな関係を築くことができることを願っています。私の決断を尊重してくれることを期待しています。
絶縁状を書く際のポイント
絶縁状を書く際には、先に紹介した以外にも以下のようなポイントを押さえて作成するとよいでしょう。
- 毛筆フォントで作成する
- 脅迫罪にならないようにする
各ポイントについて、詳しく解説します。
毛筆フォントで作成する
絶縁状を、Wordなどの文書作成ソフトで縦書きで作成する場合、一般的にはMS明朝などの書体を使用するとビジネス向けの文書となり、迫力に欠けてしまいがちです。
もし手書きする場合は、筆を用いて作成するケースが大半ですので、なるべく毛筆フォントで作成するのがよいでしょう。
Wordのフォントで言えば、「HGP行書体」などのように毛筆で書いたようなフォントが複数存在するため、ぜひ有効活用してください。
脅迫罪にならないようにする
相手との縁を切りたいという理由として、相手側への憎悪の気持ちが多いです。
絶縁状を作成していると、今後二度と会うことがないという意識が憎悪の気持ちを助長して、さらに荒々しい言葉を用いて作成してしまうケースが見られます。
例えば、「もし見かけた際にはただではおかない」などの、相手に恐怖を与えるような表現を使用すると、刑法第222条の脅迫罪に該当する恐れがあります。
第222条
生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者は、2年以下の懲役又は30万円以下の罰金に処する。
親族の生命、身体、自由、名誉又は財産に対し害を加える旨を告知して人を脅迫した者も、前項と同様とする。
絶縁したい気持ちは理解できるものの、あくまでも冷静になって脅迫状の内容を検討してください。
絶縁状を送る際のポイント
作成した絶縁状を相手に送付する際にも、気を付けるべきポイントがあります。
特に、以下のポイントに注意して送付しましょう。
- 「内容証明郵便」で送る
- 弁護士・行政書士などに依頼する
- 住所がバレない工夫をする
各ポイントの詳細は、以下のとおりです。
「内容証明郵便」で送る
絶縁状送付したとしても、その内容を無視されるリスクがあります。
相手からすれば、届いていないと言い張るケースもあるため、通常の郵送などで送付しても効果がない場合が多いです。
そこで、相手にさらに絶縁することを強調するために、内容証明郵便で送付する選択肢がおすすめです。
内容証明郵便とは、配達した記録と手紙の内容が、郵便局に記録として残る送付方法となります。
書留という形で配達されることになり、配達先で受け取りのサインが必要となります。
以上より、相手側にある程度のプレッシャーを与える効果がある点が魅力的です。
費用としては、普通郵便よりも若干高くなりますが、ぜひ取り入れたい方法です。
弁護士・行政書士などに依頼する
相手との関係で、不利な状態で絶縁状を作成しなければならないケースがあります。
そこで、弁護士や行政書士などの国家資格を有した専門家に絶縁状を作成してもらうと、相手にプレッシャーを与えることが可能です。
特に、親や先輩の権威性を振りかざすタイプである場合、より強い権威に弱い傾向にあるため弁護士や行政書士の名前を見ただけでも委縮する場合があります。
弁護士や行政書士に依頼する場合は費用がかかりますが、相手との関係性次第では対応するのもよいでしょう。
住所がバレない工夫をする
絶縁状を内容証明郵便などで送付する場合、自分の住所を記載しなければならないため、相手に住所がばれてしまうリスクがあります。
もし、住所がばれてしまうと相手に乗り込んでこられるなどの可能性があるため、どうしても住所を知られたくない場合はバレない工夫が必要です。
例えば、弁護士や行政書士などの代理人が発送することで、差出人の住所は記載しなくてもよいため、住所を知られずに済みます。
まとめ
絶縁状は、法的な効力はないものの相手との関係を断ち切るための最適な手段です。
ただし、作成方法を誤ると脅迫罪に問われるなど、注意すべきポイントも多いです。
今回紹介したポイントを意識して、適切な絶縁状を作成して送付してください。
社団法人蓮華では、相続などのトラブルに対しても真摯にサポートさせていただきます。
プロフィール
- 一般社団法人蓮華は高齢者様を一人にさせず、一人一人に対して真心を持って接していく会員制の団体です。 直面している社会問題を寄り添い共に考え、より良い未来を作り、 人生を豊かにしていくサポートを行っていきます。
最新の投稿
- 相続お役立ちコラム2024.10.24上申書 熟慮期間が過ぎても放棄が認められる?上申書によって通過するケースも
- 相続お役立ちコラム2024.10.23口座凍結で引き落としもできない?相続時の口座凍結における対策について
- 相続お役立ちコラム2024.09.18基礎控除で相続税が0? 相続における基礎控除の基本知識
- 相続お役立ちコラム2024.09.17これで不動産相続が分かる 不動産相続における税金・登記まとめ