上申書 熟慮期間が過ぎても放棄が認められる?上申書によって通過するケースも

相続人の財産を受け継ぎたくない場合、相続放棄という手段によって相続財産を受け継がない方法があります。

ただ、相続をしないと言っても実際に財産を放棄するというのは、財産も得られなくなる行為です。

そこで、相続放棄をするのに慎重になるために熟慮期間というものが存在します。

今回は、この熟慮期間とは何かについて紹介していきます。

相続放棄の熟慮期間はいつから始まる?

まず、相続放棄に関しては熟慮期間が存在します。

熟慮期間の開始時期や終了時期、終了後にどうなるかについて詳しく見ていきましょう。

熟慮期間とはなにか

熟慮期間とは、相続人が相続に関して引き継ぐのか放棄するのかなどを考える際の期間です。

被相続人の財産があるとはいえ、相続人が相続をしたくないと思ったときに、相続するかどうかを考える時間を設けています。

「この時期になったらしっかりと考えるべきことは考えてくださいね」という法律からの配慮です。

熟慮期間はいつから始まっていつ終わるのか

熟慮期間の開始時期は、被相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから始まります(民法915条)。

相続放棄は被相続人が死亡しなければ開始することなく、相続放棄はできません。

熟慮期間の終了は相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内です(民法915条)。

比較的短い期間なので、早めに決断することが必要となります。

熟慮期間が過ぎるとどうなるのか

熟慮期間が相続をするかしないかを考える期間であることを紹介しましたが、それを過ぎてしまった場合にはどうなるでしょうか。

ここからは熟慮期間が経過した後はどうなるかなどを紹介します。

熟慮期間がすぎると、相続放棄ができない

熟慮期間を過ぎると、相続放棄をしなかったとされ、債務も含めたすべての財産を相続する「単純承認」をしたとみなされます(民法921条2号)。

熟慮期間を過ぎたら、もはや相続放棄はできません。

例外的にできるケースも存在する

原則的に、熟慮期間経過後には相続放棄をすることはできません。

しかし、例外的に相続放棄ができるケースもあります。

最高裁昭和59年4月27日において、被相続人に全く財産がないと相続人が思っていた際に、実は相続財産があった際に期間までに相続放棄をしなかったケースがありました。

そのような場合において、相続財産がなかったと信じるに足りる正当な理由があった場合には、熟慮期間経過後に相続放棄が例外的に認められます。

相続人と全く連絡を取らなかったことや、通常の調査では財産を見つけられなかったなど、余程の事情がなければなりませんが、例外的なケースも覚えておくといいでしょう。

熟慮期間経過後の相続放棄と上申書の作成

熟慮期間延長をするためには、上申書の作成が必要です。

上申書とは、相続放棄を認めてもらうための具体的な事情を記載した書面のことを指します。

上申書には、なぜ相続放棄ができなかったのかという理由を事細かに書く必要があります。

この際に、上申書の内容については幾つかの注意点があります。

住所や氏名など形式的な部分をしっかりと書く必要がありますが、相続放棄をしなかった理由を書くのが素人には意外にも難しいのです。

判例の通りに書くだけではなく、事情に関しても事細かに裁判所に分かるように説明しなければなりません。

実際に記載する時には、初心者の方では書くのが難しいため、専門家のアドバイスが必要となります。

被相続人が死亡した後に、専門的なアドバイスをもらえる下記サービスに相談してもらえると、上申書もスムーズに書けるでしょう。

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熟慮期間の延長 経過する前にできること

熟慮期間が経過する前に、熟慮期間中に相続放棄などを選択できない場合には、その期間を延長できます。

ここからは、熟慮期間の延長について、具体的な手続きなどを紹介します。

熟慮期間の延長とは

熟慮期間は短いのですが、熟慮期間を経過した場合、その期間を延長することもできます(民法915条但書)。

請求方法としては、利害関係人又は検察官から家庭裁判所に請求することで期間延長をします。

延長できる期間に関しては、民法上には詳しいことは書かれていません。

一般的には1ヵ月から3ヶ月程度と言われており、事情によって延長期間は異なるようです。

熟慮期間の延長にはそれなりの理由がいる

期間延長ができる要件はいくつかありますが、一般的には以下の通りです。

  • 財産の調査が間に合わない場合
  • 相続人の複数名の所在が不明な場合
  • 自分が相続人であることを知ったのが遅れた場合

状況によっては被相続人の相続関係が複雑であるケースもあります。

財産状況も調べきれなければ、思わぬ負債を発見してしまうケースもあるでしょう。

また、相続人全員を確認することや自分が相続人であることを知らなかったこともあるかもしれません。

一定の理由があれば、熟慮期間中に相続放棄をすることができなかったという事情が考えられるため、期間延長が認められます。

なお、熟慮期間の再延長も認められますが、基本的には前回よりもより詳細な理由を書くことが必要です。

熟慮期間延長に必要な書類

熟慮期間延長の際には、裁判所に提出する必要書類があります。

その書類に関して、まず共通する書類については下記の通りです。

  • 熟慮期間延長の申立書
  • 被相続人の住民票除票もしくは戸籍附票
  • 利害関係であることの証明資料(利害関係人がする申立ての場合)
  • 延長を求める相続人の戸籍謄本

その他にも、相続人の地位によって必要書類が異なります。

パターンが多くありますので、詳しくはこちらのサイトを参照してください。

また、収入印紙800円分(相続人1人につき)連絡用の郵便切手も必要なので、あらかじめ用意しましょう。

熟慮期間延長手続きの流れ

熟慮期間の延長をする際には、具体的にどの様な順番で行うかを見ることで、より分かりやすくなるので、どのように進めていくかをまとめました。

  1. 必要となる書類を作成し、準備する
  2. 準備した書類を管轄している裁判所に提出する
  3. 家庭裁判所が内容を審査し、審判を下す
  4. 内容を確認し、納得が出来なければ即時抗告をする
  5. 熟慮期間の期間が確定する

このような流れで進んでいきますので、延長する際には参考にしてください。

熟慮期間中にしてはいけないこと

熟慮期間中は相続放棄をするかしないかだけを考えていればいいだけではありません。

相続人の中には、よく知らない間にやってしまったことで、重大な結果を引き起こしてしまう方も珍しくありません。

そのため、事前に熟慮期間中にしてはいけないことを紹介します。

熟慮期間中にしてはいけないこと

ちょっとした行為で、相続放棄ができなくなる

例え、熟慮期間中であっても、(民法第921条第1号)相続放棄ができなくなるケースがあります。

該当する行為をしてしまうと、「単純承認」したものとして、相続ができなくなるので注意してください。

次に、どのようなことをするといけないのかを見ていきます。

してはいけない行為とはなにか

具体的に、熟慮期間中にしてはいけないことは以下の通りです。

  • 経済価値のある相続財産を捨てる
  • 経済価値のある相続財産の譲渡
  • 相続財産を使ってしまった
  • 相続財産を隠してしまう
  • 遺産分割協議をする
  • 相続対象となっている家屋を壊す
  • 被相続人の有していた債権を取り立てる
  • 被相続人の財産を隠匿する など

これらの行為をしてしまうと、被相続人の財産を積極的に処理する行為や隠匿したと判断され、「法定単純承認」(民法第921条1項1号及び3号)に該当してしまいます。

良かれと思ってついうっかり処理する場合にも、該当してしまうことがあり、知らない間に相続放棄ができなくなったことになりかねません。

また、相続財産の管理はどこまでならできるのかということも、なかなか一般の方には分かり難いでしょう。

そういったときには、弁護士などの専門家からのアドバイスをしっかりとお伺いしてください。

下記サポートをご利用いただければ、相続放棄をしたい際に適切なアドバイスとしてはいけないことを具体的にアドバイスできます。

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熟慮期間中やその前に考えたほうがいいこと

熟慮期間を迎える際に、主に考えておくべきことは下記の通りです。

  • 相続財産の把握
  • 相続人の対象者
  • できれば、財産を生前に調査する

相続放棄時に必要な情報を収集するだけではなく、限定承認としたいといった場合にも、これらの情報はより必要になります。

ここからは、熟慮期間やその前にやるべきことを紹介します。

被相続人の財産や負債をすべて把握しよう

財産といっても有益なものばかりではなく、負債や財産として処理しにくい物があるでしょう。

そのまま受け継ぐのは、後の処理に手間取ってしまい、厄介なことをはらんでしまいます。

熟慮期間中に財産調査をしっかりと行う必要がありますが、調べ忘れ等によりうっかり負債などを見逃していたということにもなりかねません。

また、慌てて相続放棄をすることについても、相続放棄は一度行うと撤回ができません。

そのため、放棄をする前に慎重な調査が必要となります。

相続放棄をした後に相続人になる人を確認する

相続放棄をした後に、相続人になる人も確認してください。

相続放棄をした際には、その相続人は初めからいない扱いとなります(民法第939条)。

これで終わりかと思いますが、相続放棄後にあなたの代わりに相続する人が現れるケースもあります。

例えば父・母・子供が一人いる場合、父親が死亡した際に子どもが相続放棄をしたとしましょう。

この場合、母親以外に父に兄弟や父の両親が健在の場合には、彼らが相続人になります。

他の人が相続人になった際、相続で新しい関係性ができるため、他の人に相続の負担がかかることも考えられるのです。

意外に盲点になっていますので、相続放棄後にどうなるかもよく考えなければなりません。

余裕があれば、生前に財産を調べておくべき

もし、いろいろと調査する時間が事前にあるのなら、生前から財産状況を把握しておくと、相続放棄の準備もしやすいでしょう。

そうしておくことで、いざ被相続人が死亡して相続開始となった場合でも、すぐに財産を把握し、相続放棄をするかしないかなどを検討しやすくなります。

短い期間であわてずに財産処理ができますので、被相続人の生前に財産状況は把握しておくべきです。

その上で、生前から財産を調べ、相続人間のトラブル回避のために、蓮華では生前からの相続対策に関するサポートも提供しています。

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まとめ

相続放棄の熟慮期間に関してここまで様々なお話をさせてもらいました。

短い期間の割には実に複雑で専門的な部分もあり、中には一般の人が何気なくやってしまったことで、相続放棄に大きな影響が出てしまう面もあります。

そのため、今一度この記事で書いたことで、特に重要な部分をまとめます。

まとめ

熟慮期間の開始と熟慮期間の日数

熟慮期間の開始と日数に関しておさらいしますと、被相続人が自己のために相続の開始があったことを知ったときから始まり、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月経過で終了します(民法915条)。

相続の開始を知ってから、3ヶ月以内に相続放棄の申請を家庭裁判所に行うことを意識してください。

また、場合によっては熟慮期間の延長もできますので、間に合いそうにない時には考慮してください。

熟慮期間の延長および経過後の対策

熟慮期間経過をしてしまいますと、相続放棄は原則としてできません。

しかし、判例によって例外的に相続放棄が認められるケースがありますので、そちらに関しても、もう一度どういった要件かや裁判所に提出する書類の内容を確認しましょう。

また、相続放棄が完全にできない状況の際に、どの様な行動をとるべきかも確認してください。

熟慮期間中にすべきこと・すべきでないこと

熟慮期間中において、相続放棄をする前にもするべきこととすべきでないことがあります。

うっかりと熟慮期間中にやってしまったことによって、相続放棄ができなくなりますので、しっかりと確認してください。

どうしてもわからないとなった際には、専門家の方にどのようなことをしていいのか悪いのかを確認しましょう。

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