家族信託の相談・依頼はどこに頼むべき?相場や選び方のコツを解説

相続を考えた場合、なるべく身内に対応してもらいたいと思うものです。

また、生前の段階でも財産管理などを家族にお願いしたい場合があります。

以上のような内容を自分の意思に沿ったものとしてもらう場合にも、家族信託は候補となる選択肢です。

ただし、家族信託は思い立ってすぐに対応できるものではありません。

家族信託に対して、専門家の知識を得ながら、より有効活用する必要があります。

では、家族信託の相談や依頼は、どこに頼むのがベターなのでしょうか。

この記事では、家族信託の最適な依頼先や、依頼する場合の相場などを紹介します。

家族信託の相談ができる専門家

家族信託について改めて解説すると、自身の老後や介護などに備えて、保有している不動産や預貯金などを信頼できる家族に託して、管理や処分を任せる財産管理の方法となります。

自信が死去した場合、遺産は相続の形で継承されるのが一般的です。

相続内容を決める方法として遺言書がありますが、家族信託を使用すれば遺言書以上に幅広い遺産の承継が可能です。

また、自分が信頼できる身内に財産の管理を依頼できるため、原則として高額な報酬が発生しない点もメリットとなります。

家族信託の場合、委託者と受託者、受益者の3者間で対応しなければなりません。

委託者は、自身が保有している財産の管理を受託者に委任し、受託者は財産の管理をおこないます。

そして、財産の管理で利益が発生する場合は、受益者がその利益を得る形となるのです。

なお、財産を委託する委託者と利益を得る受益者が同じ人が対応することが可能で、実行上では同じ人が対応するのが一般的となっています。

家族信託の場合、本人と家族との間に受託者が入り、実際の資金運用をおこないます。

受託者との間では契約を結ばなければならず、また法令に従った対応も必要です。

よって、全く知識がない状態で対応するのは困難となります。

そこで、以下のような専門家に相談するのがおすすめです。

司法書士

司法書士とは、主に法務局や裁判所、検察庁などへ提出するための書類作成を担当します。

特に、登記や供託の手続きを依頼するケースが大半です。

また、審査請求の手続きを依頼者の代理をおこなう場合もあり、依頼者がおこなわなければならない必要な手続きを、ムーズに進めることが主な役割です。

司法書士が担当する主な業務として、以下があります。

  • 登記業務
  • 供託業務
  • 書類作成
  • 訴訟代理・支援
  • 企業法務
  • 相続・成年後見業務

家族信託の場合、相談先として最適なのが司法書士と言われています。

その理由は、書類作成から信託登記の申請までをワンストップで依頼できるためです。

また、家族信託を運用する上で、成年後見制度への対応や遺言、信託登記などの幅広い知識も必要となります。

その点で、司法書士の場合は相続登記から遺言、成年後見などの知識に長けており、スムーズに対応してもらえるのが魅力的です。

弁護士

弁護士とは、あらゆる憲法や法令を駆使して基本的人権を擁護して、社会正義の実現を使命としている人を指します。

具体的には、以下のような業務を担当します。

  • 紛争の予防に向けた活動
  • 法廷における訴訟活動
  • 国会などの立法や制度の運用改善に関わる活動
  • 個人の権利を守る人権擁護活動
  • 企業や公共団体における組織内の活動

上記において、最も弁護士としてのイメージを持ちやすいのが法廷における訴訟活動でしょう。

ただし、弁護士はそれ以外にも多くの業務に対応しているのが特徴です。

弁護士は法律のプロフェッショナルであり、法律業務範囲に制限がありません。

よって、信託契約書の作成や不動産登記なで対応できるため、司法書士よりスムーズに手続きを依頼可能です。

ただし、弁護士の場合は依頼する場合の費用が高価なため、費用対効果を考えて依頼しなければなりません。

行政書士

行政書士とは、主に行政への許認可申請を得るために提出する書類の作成や、官公署に提出する書類に関する相談業務などを担当しています。

個人で利用する場合、主に以下のような手続きや相談が可能です。

  • 遺言・相続
  • 契約書
  • 自動車登録
  • 日本国籍取得
  • 土地活用
  • 内容証明

行政書士の場合、他の資格で独占されていない業務全般を担当できる点が強みです。

家族信託関連で言えば、遺言や相続、成年後見、契約書類の作成、内容証明の書類作成などを依頼可能です。

ただし、信託契約書の書類作成は対応できるものの、法務局に出向いて登記するなどの代理権はありません。

よって、委託者本人が手続きしなければならない点が弱点となります。

他にも、公正証書の保管や不動産登記の手続きについても、行政書士に依頼できません。

税理士

税理士とは、国が認めた税務の専門家です。

税理士法という法律に基づいて、税理士の独占業務として以下3つが定められています。

  • 税務代理
  • 税務書類の作成
  • 税務相談

税の専門家となる税理士は、節税につながる相続財産の分割方法を提案しもらったり、相続税の申告手続きなどのアドバイスを得られます。

相続に特化した税理士事務所も存在しており、家族信託などの相談にも柔軟に応じてもらえます。

ただし、税理士は税金の取り扱い業務がメインとなり、法律の専門家という位置付けではありません。

家族信託の場合、信託契約書を作成したり、不動産登記などの手続きが必要となりますが、税理士が対応できる範疇を超えており、依頼できません。

家族信託の相談・依頼相場

家族信託を各専門家に相談や依頼する場合、当然費用が掛かります。

気になる、各専門家への相談・依頼費用は以下のとおりです。

  • コンサルティング費用:信託財産の1%程度
  • 公正証書作成の手続き代行費用:10万円~15万円
  • 公正証書の作成費用:3万円~10万円
  • 司法書士への登記依頼費用:8万円~12万円
  • 登録免許税:固定資産税評価額の0.3~0.4%

なお上記は目安であり、例えば法律のプロである弁護士に依頼する場合、費用が上振れするケースが多いです。

また、コンサルティング料は信託財産の1%が相場となり、概ね以下のような金額となります。

信託財産額 コンサルティング料の相場
1,000万円 30万円
2,000万円 30万円
3,000万円 30万円
4,000万円 40万円
5,000万円 50万円
6,000万円 60万円
7,000万円 70万円
8,000万円 80万円
9,000万円 90万円
1憶円 100万円
2憶円 150万円

それぞれの費用を見込んで、適切に対応する必要があります。

なお、実際に依頼する前の相談は無料な場合も多いので、ぜひ活用してください。
家族信託とは。メリット・デメリットと手続き方法
家族信託は必要?仕組みと制度を詳しく解説

家族信託の相談先を選ぶコツ

家族信託の相談先を選ぶ場合、以下のような点を重視するのがおすすめです。

  • 家族信託の取扱件数が多い
  • 家族信託専門士の資格を所持している
  • 料金体系を明確に説明してくれる
  • アフターフォロー体制がある
  • 他分野の専門家とのネットワークを持っている
  • 複数の専門家が在籍している

各ポイントについて、詳しく見ていきましょう。

家族信託の取扱件数が多い

相談先を選ぶ際に重視したいのが、相談先の過去の実績です。

単純に、相談先の経験が多ければ多いほど、家族信託に対しての悩みなどを解決できる可能性が高いです。

家族信託は、まだ制度としては熟成されていない状況であり、相談に対応している場合がすくない状況となっています。

そこで、経験がある相談先に相談すれば、より解決に近づけることでしょう。

また、取扱件数が多いということは、それだけ多くの人から信頼されている証拠ともなります。

家族信託専門士の資格を所持している

家族信託をおこなう上で、各種法律への対応が必須です。

それと同時に、家族信託に対する知識がなければ、適切に対応できません。

そこで、家族信託に対する資格として家族信託専門士があります。

一般社団法人 家族信託普及協会が制定している家族信託専門士の資格は、国家資格ではないものの、家族信託に関する以下のような業務を適切に対応できるスペシャリストです。

  • 信託組成の適切性の判断
  • 信託のスキームの立案
  • 信託契約組成に関連する見積書の作成
  • 信託契約書の作成実務
  • 公正証書作成支援や信託登記実務
  • 信託組成後の継続フォロー

家族信託専門士の資格を所持していれば、安心して相談できるのでおすすめです。

料金体系を明確に説明してくれる

家族信託を相談して実際に依頼する場合、先に紹介したような費用が掛かります。

実際にかかる費用はケースバイケースで異なり、依頼先によって金額が異なるものです。

そこで、どのような料金体系であるかを事前に説明してくれるかどうかが重要です。

料金について確認しないと、依頼した後に思わぬ高額請求を受ける可能性もあるので注意しましょう。

アフターフォロー体制がある

家族信託の場合、一度手続きしたら完了というわけではなく、長期間にわたり対応しなければなりません。

例えば、依頼してから数年経過したタイミングで、契約書を変更する必要が生じる場合もあるのです。

そこで、すでに対応してもらった人に再度相談できれば、スムーズに手続きが進めるものです。

その点で、アフターフォロー体制が整っているかどうかも選ぶ際には重要なポイントとなります。

他分野の専門家とのネットワークを持っている

家族信託の場合、非常に多岐にわたる範囲の契約や手続きなどが必要です。

特に、高い専門性が問われる民事手続きや税金の知識も必要となるので、一人ですべて賄いきれるほど甘いものではありません。

例えば、弁護士や司法書士など法律に詳しい専門家に依頼する場合、相続対策などに関する部分まで対応するのは困難です。

よって、複数の専門家でネットワークを構築し、網羅的に家族信託に対応してくれるかどうかをチェックしましょう。

複数の専門家が在籍している

家族信託の場合、同じ専門家であってもアプローチが異なる場合があります。

また、専門家も人間であり性格の違いも見られます。

可能であれば、複数の専門家がいるところに依頼すると、自分との相性が良い専門家を選べる可能性があり、おすすめです。

まとめ

家族信託は、考え方自体はいたってシンプルで分かりやすいものの、実際に対応しようとした場合、意外と手間がかかるものです。

特に、法律的な知識をもって対応しなければならない箇所が多く、手続も面倒です。

もし、少しでも不安を感じている場合は社団法人蓮華までお気軽にご相談ください。

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