親と縁を切る方法とは?縁切りの方法5選と相続に関する注意点を解説

人間によって、親は大切にしたい存在です。

ただし、必ずしも親との関係性はよいとは言えない場合があり、親との縁を切りたいと考えている方がいるのも事実です。

法律上でも、親との関係性を断ち切ることはかなり難しい選択となりますが、どうしても縁を切りたい場合はどのように進めれば良いのでしょうか。

この記事では、親と縁を切る方法と相続に関する注意点を解説します。

特に、相続に関する注意点は、大きな影響が発生する可能性があるためしっかりと学びましょう。

親と縁を切る方法はある?

はじめに、親と縁を切る方法があるのかを正しく理解する必要があります。

ここでは、親子の縁についてや、どうしても縁を切りたい場合の方法を紹介します。

法的観点で見た「親子の縁」とは

法的な観点で見た場合の親子の縁とは、子供が成人している場合は基本的に生活扶助義務と相続に関するものだけです。

生活扶助義務とは、義務を負担すべき人が自分の地位相応の生活をしても余力があるケースにおいて、その限度で相手方の生活を援助する義務のことを指します。

この場合における「援助」とは,相手方が最小限度の生活を送れる程度で構わないという考えが一般的です。

具体的な例としては、一般の親族間の扶養義務などが該当し、民法では以下のように規定されています。

① 直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある。

② 家庭裁判所は、特別の事情があるときは、前項に規定する場合のほか、三親等内の親族間においても扶養の義務を負わせることができる。

③ 前項の規定による審判があった後事情に変更を生じたときは、家庭裁判所は、その審判を取り消すことができる。

引用:民法877条

よって、親子の間では親が生活扶助義務を持つことになります。

相続については、親子相互に相続する権利が存在し、子供が親の財産を相続できる形です。

逆に、子供の方が先に他界した場合には親が財産を相続する権利を有します。

その他、子供が未成年である場合は親に養育・監護義務が発生しますが、それ以上に親子の縁に関する法律などは存在しません。

親との縁を切る法律・制度はない

親との縁に関する法律が存在する一方で、親との縁を切るための法律や制度は存在しません。

戸籍の分籍をおこなうことで、一見すると親との縁を切ることができるように感じられます。

ただし、戸籍を分けたとしても親子関係を解消することはできず、あくまでも気分的に親と縁を切れるというだけのものです。

特別養子縁組を行えば縁切りも可能

ほかにも、養子縁組になると、親との縁を切ることができると思われがちです。

ただし、実親との関係は継続したままとなるため、相続関係や扶助義務を断ち切ることができません。

そこで、完全に縁切りしたい場合は特別養子縁組になる方法があります。

特別養子縁組とは、子供の福祉の増進を図ることを目的として、養子となる子供の実親との法的な親子関係を解消して、実の子と同じ親子関係を結ぶ制度のことです。

養親になることを望んでいる夫婦の請求に対して、下記の要件を満たせば家庭裁判所の決定を受けて成立します。

  • 親の同意:養子となる子供の父母の同意が必要。ただし、実父母がその意思を表示できない場合や、実父母による虐待などの場合は不要となる場合がある。
  • 養親の年齢:養親となるには配偶者のいる方でなければならず、夫婦共同で縁組することになる。また、養親となる方は25歳以上でなければならない。
  • 養子の年齢:養子になる子供の年齢は養親となる方が家庭裁判所に審判を請求する時点で15歳未満である必要がある。ただし、子供が15歳に達する前より養親となる方に監護されていたケースでは、子供が18歳に達する前までに審判を請求可能。
  • 半年間の監護:縁組成立のために養親となる方が養子となる子供を6ヵ月以上監護している必要がある。

親との縁を切りたい考えの背景

親との縁を切りたいと考える背景は、実に複雑です。

一般的には、親子の関係は何事にも変えられないものがありますが、主に以下のような背景があると縁を切りたいと考えるのです。

  • 親からの過干渉・虐待
  • 親からの経済的DV

各背景について、詳しく解説します。

親からの過干渉・虐待

親は、いつまでも子供が可愛いと思って、いつまでも自立を促さず干渉する場合があります。

子供がしっかりと自立して社会人として活動していても、まだまだ未熟と感じて子供を支配しようとする場合があるのです。

これりより、子供としてはいつまでも自由を与えてもらえないため、窮屈に感じて親との縁を切りたくなります。

ほかにも、親からの虐待を受けて耐えきれずに縁を切りたいというケースも多いです。

実際に、親から虐待を受けて亡くなるというケースが後を絶ちません。

いつまでも我慢せず、すぐに親との関係を断ち切るように行動を取りたいものです。

親からの経済的DV

親からの虐待は肉体的に辛いものですが、親からの経済的DVも辛いものです。

親からの経済的DVとは、自分が働いて得た報酬を親が搾取し、必要最小限のものしか与えてもらえない状態です。

経済的DVは、特に夫婦関係で頻繁に発生しがちで、例えば妻が夫の稼ぎを握って、最低限のお小遣いしか与えないなどの事例があります。

親からの経済的DVも、自分が自由に使えるお金がなくなることで、やがて親との縁を切りたいと感じるようになる場合があります。

実質的な縁切りをする方法

親との縁を切る方法としては、特別養子縁組となる方法があります。

ただし、子供が18歳を超える場合は特別養子縁組となることができず、法的な意味での縁切りができなくなるのです。

どうしても、実質的な縁切りをしたい場合は以下の手段を取るしかありません。

  1. 戸籍・住民票の閲覧制限をする
  2. 戸籍を分籍・除籍する
  3. 戸籍上の名前を改名する
  4. 絶縁状を作成して送る
  5. 親族関係調整調停を利用

各方法について、詳しく解説します。

戸籍・住民票の閲覧制限をする

親が干渉してくる場合や虐待されている場合、親が知られない場所で生活したいものです。

そこで、戸籍や住民票の閲覧制限をすることで、親が居場所を把握できなくなります。

以前は、成人した子供は過去や現在の虐待を理由に、閲覧制限することができませんでした。

ただし、現在ではルールが変更されたことによって、虐待加害者である親が住民票を取得したり閲覧されないようにしたりすることが可能になりました。

住民票の閲覧制限とは、一般的には住民票、戸籍の附票をこの人だけには見せたくないと設定すれば、閲覧できなくする行動のことです。

実際に、虐待を受けている子供が戸籍・住民票の閲覧制限をおこない、助かっている事実があります。

戸籍を分籍・除籍する

親の戸籍に入っている子供が親の戸籍から出ていくために、分籍を選択することができます。

分籍とは、今いる戸籍から抜けた上で届出人を筆頭者とした新戸籍を作る手続きのことです。

分籍の手続きは各市区町村の役場で行えますが、手続きできる人は18歳以上に限定されます。

よって、18歳未満の方は分籍による除籍は不可能であり、分籍届出をした場合には元の戸籍には戻れないなどの注意点があります。

戸籍上の名前を改名する

戸籍上の名前を改名して、親から縁を切るという方法もあります。

改名することでによって、親から見つかりにくくなる効果だけでなく、精神的に親との関係を断ち切るため改名したいという場合も多いです。

名字、名前を改名したい場合、家庭裁判所において「氏の変更許可申立」や「名の変更許可申立」をおこない、家庭裁判所の許可を得なければなりません。

また、改名の動機が正当かつ必要性が高く、改名による影響が少ないと判断されない限り、許可を得られない場合もあるので注意してください。

もう少し手軽に改名したい場合、戸籍上の名前とは違う世間一般に使用している名前である、通称名を名乗る方法もあります。

通称名を名乗ること自体は違法ではなく、通称名を名乗ることに特に手続きは不要です。

絶縁状を作成して送る

絶縁状とは、関係を絶ちたい相手に対し、その意思を伝えるための書状のことです。

絶縁状に対して法的な効力はないものの、親との縁を切りたい場合にはっきりと自分の意思を伝えることができる効果があり、精神的に楽になれます。

絶縁状に決まりはないものの、シンプルに今後一切会わない等の絶縁の意思だけを伝えるのがポイントです。

もし、過激な表現を用いると脅迫罪に該当する場合もあるので注意してください。

また、相手に確実に届けるために内容証明郵便を使用して送るのが一般的となっています。

親族関係調整調停を利用する道も

親族間において感情的対立や親族の財産管理などに関する紛争が存在して親族関係が悪化した場合、円満な親族関係を回復するためのきっかけとして、家庭裁判所の調停手続を利用できます。

調停手続においては、親族関係が悪化した原因などについて、当事者双方から事情を聴いたり必要に応じて資料などの提出を受けたりして事情をよく把握し、解決に向けた助言を得られます。

無事調停が成立すればよいものの、場合によっては調停が不成立になることもあるのです。

この場合、家事事件手続法に定められる審判事項について、家庭裁判所が審判することでて結論を示すことも可能です。

なお、審判事項として「親族間の扶養に関する事項」があるため、親との関係性に関する審判を受けることができます。

縁を切った場合の相続に関する注意事項

親と無事縁を切ることができた場合、相続に関して注意しなければなりません。

特に、相続に関して以下のようなケースでは対応が必要です。

  • 親の遺産を相続したくない場合は「相続放棄」
  • 自分の遺産を渡したくない場合は「相続廃除」

各注意点について、詳しく解説します。

親の遺産を相続したくない場合は「相続放棄」

親の遺産を相続したくない場合は、相続放棄の手続きが必要です。

相続法規の流れとしては、主に以下で進めることになります

①相続人の調査

相続人の調査とは、亡くなった方の出生から死亡まで、すべての戸籍謄本などの書類を収集して誰が相続人になるのかを調査することです。

もし、養子になっているケースや離婚歴がある場合、相続関係が複雑となる可能性があるので注意してください。

②相続財産の調査

相続財産の調査は、相続人の調査と同じように、すべての相続において共通する手続きとなります。

マイナスの財産を含めて、親が亡くなるまでに所有していたすべての財産を調査しなければなりません。

もし、調査が困難な財産については、司法書士など専門家のサポートを受けて調査を進める必要があります。

③家庭庭裁判所に対して相続放棄の手続きをおこなう

相続人と相続財産の調査をおこなった結果、相続放棄を選択する場合は家庭裁判所へ相続放棄の手続きをおこないます。

相続放棄したことを相続人や債権者へ知らせる

相続放棄した場合、最初から相続人ではないものとみなされて、相続人としての権利が次の順位の相続人に移行します。

この場合、相続の権利が移った旨を次の順位の相続人へ必ず伝えてください。

また、被相続人の借金などについては債権者に対して、相続放棄の申述が受理されたことを連絡することをおすすめします。
相続放棄の手続き手順とは?期限や必要書類について徹底解説!

自分の遺産を渡したくない場合は「相続廃除」

自分の遺産を渡したくない場合に利用できるのが、相続廃除です。

相続廃除は、民法892条で以下のように定められています。

遺留分を有する推定相続人(相続が開始した場合に相続人となるべき者をいう。以下同じ。)が、被相続人に対して虐待をし、若しくはこれに重大な侮辱を加えたとき、又は推定相続人にその他の著しい非行があったときは、被相続人は、その推定相続人の廃除を家庭裁判所に請求することができる。

相続権を保有している推定相続人に対し、被相続人が家庭裁判所に申し立てすることで、相続から廃除して相続権を失わせることが可能となっています。

相続廃除を申し立てができるのは、被相続人本人のみとなります。

また、以下の条件を満たさない限り、申し立てできないため注意してください。

  • 被相続人に対して虐待をした場合
  • 被相続人に重大な侮辱を加えた場合
  • その他の著しい非行があった場合

相続廃除されると遺留分もなくなるため、かなり効果の大きな手続きとなります。
絶縁状態の親族との遺産相続問題|相続放棄や遺産分割の適切な対処法
勘当した子供に相続しない方法を紹介|子供との縁を切る有効的な方法
「絶縁」を理由に相続放棄がしたい!相続放棄の手順と注意点を解説

まとめ

親との関係を築きたい場合でも、虐待などを受けている場合は関係を絶つという判断を下さなければならない場合があります。

法律上では特定養子縁組になる以外は縁を切るのは難しいですが、精神的に楽になれる方法がいくつかあります。

今回紹介したポイントに注意して、手続きを進めることをおすすめします。

社団法人蓮華では、相続関連を手厚くサポートさせていただいていますので、もし不安なことがある場合などはお気軽にご相談ください。

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